皆さん、こんにちは!カジノやIR(統合型リゾート)に関するニュースを耳にすると、「日本にはすでに公営ギャンブルがあるのに、なぜカジノが必要なの?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
確かに、どちらも「お金を賭けて遊ぶ」という点では共通しています。しかし、その成立の経緯、目的、運営体制、そして社会的な役割は、驚くほど異なっています。
私自身、長年この分野の研究や議論に参加してきましたが、この違いを理解することが、IRやカジノに対する冷静な判断を下すための第一歩だと感じています。
今日は、このカジノと公営ギャンブルの**「似て非なる本質」**について、 friendlyな視点から、分かりやすく徹底的に解説していきます。
1. 日本の「公営ギャンブル」とは何か?
まず、日本で長らく親しまれてきた公営ギャンブルについて整理しましょう。
公営ギャンブルとは、刑法で禁じられている賭博行為の中で、特定事業の振興や地方財政への貢献を目的として、法律で例外的に許可されているものです。
公営ギャンブルの主な種類(リスト)
現在、日本で法律に基づいて運営されている公営ギャンブルは以下の通りです。
競馬(日本中央競馬会JRAおよび地方競馬)
競輪(自転車競技法に基づく)
オートレース(小型自動車競走法に基づく)
競艇・ボートレース(モーターボート競走法に基づく)
宝くじ・スポーツ振興くじ(TOTOなど)(厳密には賭博ではありませんが、射幸性を持つ公的な仕組みです)
地方財政への貢献という大義
公営ギャンブルの最大の特徴は、単なる娯楽提供ではなく、**「収益を公益目的に充てること」**が法律上の大義であるという点です。
例えば、競艇や競輪の収益の一部は、地方自治体の財源として活用され、社会福祉やインフラ整備などに使われています。つまり、「地域社会に貢献するための事業」という色彩が非常に濃いのです。
2. 「カジノ(IR)」が目指すものとは?
一方、現在日本で導入が進められているカジノは、単体で存在するものではなく、**「IR(統合型リゾート)」**という大きな枠組みの一部として考えられています。
カジノはIRの「核」に過ぎない
IRとは、国際会議場、展示場、ホテル、ショッピングモール、エンターテイメント施設、そしてカジノが一体となった、巨大な複合観光施設を指します。
カジノはその収益性の高さからIR全体の開発資金や運営を支える「エンジン」の役割を担いますが、IR全体で見れば、カジノエリアが占める床面積は全体のわずか3%程度に厳しく制限されています。
目的は「観光立国」の実現
カジノ(IR)導入の主たる目的は、公営ギャンブルのように地方財政の穴埋めをすることではありません。その目的は、国際競争力のある滞在型観光の拠点を整備し、経済活性化と税収増を図ることです。
特に、アジア圏の富裕層やMICE(国際会議・展示会)客など、従来の日本が取り込めていなかった高付加価値な観光客を誘致し、日本全体の観光産業を底上げすることが主眼に置かれています。
3. カジノと公営ギャンブルの決定的な違い
それでは、両者の違いを具体的な項目で比較してみましょう。ここに、私たちがカジノを単なる「新しいギャンブル」として捉えるべきではない理由があります。
比較項目 公営ギャンブル (例: 競馬、競輪) カジノ (IR内)
法的根拠 各専門法(自転車競技法、競馬法など)に基づき、刑法の賭博罪の例外として容認。 特定複合観光施設区域整備法(IR整備法)に基づき、観光振興のために設置。
主な目的 特定産業の振興、地方財政への貢献。 国際観光客の誘致、経済の活性化、税収の増加。
運営主体 地方公共団体または法律で定められた公益法人。 国の厳しい審査を経た民間事業者(外資系も含む)。
設置場所 主に競技場、場外発売所。分散型。 大規模ホテル、会議場と一体化した複合施設内。集約型。
収益の使途 地方自治体の財源、関連事業への還元。 国および自治体の税収、企業収益、IR全体の維持管理。
ゲームの種類 主に投票券(オッズに基づく)。 テーブルゲーム(ポーカー、BJ等)、スロットなど多種多様。
運営主体とガバナンスの違い
最も重要な違いの一つは、運営主体です。
公営ギャンブルは、地方自治体やその関連団体が主体となり、公益性が求められます。一方で、カジノは、国が厳格な規制とライセンス制度を敷き、世界トップレベルのノウハウを持つ民間事業者(多くは国際的なIRオペレーター)が運営します。
この民間運営により、サービスレベルや施設環境が国際的な水準に保たれ、観光客にとって魅力的な「エンターテイメント」として機能するのです。
4. 規制と依存症対策における厳格さ
公営ギャンブルとカジノを比較する際、必ず議論になるのが**「依存症対策」**です。カジノ(IR)法案が成立した背景には、公営ギャンブルでは十分とは言えなかった依存症対策を、より厳格に行うという使命がありました。
依存症対策は「世界標準」へ
IR整備法では、カジノに入場できるのは**日本人と永住権保持者に限って回数制限(週3回、月10回以内)**を設けたり、入場料(6,000円)を徴収するなど、世界でも類を見ない厳しい規制が設けられています。
また、入場時の本人確認、入場履歴の管理、従業員による声かけ、自己申告プログラムなど、具体的な対策が義務付けられています。
この点について、IR推進の議論に詳しい専門家は、両者の規制レベルの違いを指摘しています。
「公営ギャンブルは歴史的に公益性を重視してきたため、利用者への個別管理や規制導入が遅れた側面があります。しかし、カジノはゼロベースで国際的な基準を導入しています。特に、日本のIR法で求められる依存症対策の厳格さは、世界で最も厳しい水準にあると言えます。」 (— ギャンブル依存対策の専門家A氏)
求められる徹底したガバナンス(リスト)
カジノ運営に義務付けられる具体的な規制・対策例:
日本人利用者の利用回数制限と厳格な本人確認。
カジノ施設内のATM設置禁止。
従業員への依存症対策研修の義務化。
家族や本人による利用制限(入場禁止)の申請制度。
カジノ施設面積および射幸心煽る広告の厳格な制限。
これらの対策は、ギャンブルを行う環境そのものが、既存の公営施設とは大きく異なることを示しています。
5. まとめ:カジノは「観光」であり、「規制産業」である
カジノと公営ギャンブルは、お金を賭ける場所という共通点はありますが、その本質は**「目的と規制の構造」**において明確に異なります。
公営ギャンブルが「公益を目的とした賭博の例外」であるのに対し、カジノ(IR)は、**「観光立国を目指すための国際的なエンターテイメント施設」であり、同時に「極めて厳しく管理された規制産業」**なのです。
私たちがIRを議論する際は、この構造の違いを理解し、「ギャンブル」という側面だけでなく、「経済効果」や「観光振興」、「依存症対策の厳格さ」といった多角的な視点から捉えることが重要だと考えます。
Q&A:よくある質問にお答えします (FAQ)
Q1: カジノの方が、公営ギャンブルよりもっと儲かるのでしょうか?
A1: 収益の規模はカジノの方が圧倒的に大きくなる見込みです。特に、テーブルゲームは公営ギャンブルの投票券と異なり、ハウス側(運営者側)の取り分を示す「控除率(還元率の裏側)」が低く設定されているため、全体として多額の資金が動きます。ただし、その収益の多くは税金として国や自治体へ納められます。
Q2: カジノができたら、公営ギャンブルは廃止されるのですか?
A2: その予定はありません。公営ギャンブルは長年、特定の産業振興と地域社会への貢献という独自の役割を果たしており、カジノ導入後も並行して運営されます。それぞれの目的と役割が異なるため、共存していくことになります。
Q3: 日本人がカジノに入るための制限は本当に厳しいのですか?
A3: はい、非常に厳しいです。日本のIR整備法における日本人(居住者)への入場制限(週3回、月10回の上限、6,000円の入場料)は、世界的に見ても最も厳しい部類に入ります。これは、依存症の予防と対策を最優先とする日本の姿勢の現れです。