近年、インターネット上で手軽に遊べる「オンラインカジノ」の広告を目にする機会が増え、その人気が高まっています。しかし、その手軽さの裏には、日本国内の法律に抵触する重大なリスクが潜んでいます。
「海外のサーバーだから大丈夫」「自宅でこっそり遊ぶ分にはバレない」といった誤解も広まっていますが、結論から言うと日本国内からオンラインカジノに参加し、金銭を賭ける行為は「違法賭博」に該当する可能性が極めて高く、実際に逮捕事例も発生しています。
この記事では、日本の法律におけるオンラインカジノの位置づけ、なぜ違法と見なされるのか、そして実際にどのようなリスクがあるのかを詳しく解説します。
1. 日本の法律におけるオンラインカジノの立ち位置
日本の刑法には、公の秩序を維持するために「賭博罪」が定められています。
賭博罪の基本原則
日本の刑法では、金銭などを賭けて偶然の勝負によって財産上の利益を得る行為(賭博行為)を行った場合、原則として**賭博罪(刑法第185条)**が成立します。
単純賭博罪:50万円以下の罰金または科料
常習賭博罪:3年以下の懲役(頻繁に繰り返した場合)
海外運営サイトでも違法になる理由
プレイヤーがアクセスしているオンラインカジノの運営元が、海外で合法的なライセンスを取得していたとしても、日本の刑法は「国内犯」だけでなく「国外犯」(刑法第2条、第3条)の一部にも適用されるため、日本国内にいる人が金銭を賭けてプレイした場合、日本の法律が適用されると解釈されています。
特にオンラインカジノの場合、「胴元(運営側)」と「客(プレイヤー)」の両者が存在し、胴元側が日本人向けにサービスを提供している場合、プレイヤー側も違法行為を助長した「単純賭博罪」の対象となるというのが警察庁の見解です。
【重要】「グレーゾーン」ではない
かつては「オンラインカジノは法律のグレーゾーンにある」といった議論もありました。しかし、後述する実際の逮捕事例以降、警察庁や専門家の間では**「日本国内で金銭を賭けてプレイすることは違法である」という認識が浸透しています。**
2. 実際に発生したオンラインカジノプレイヤーの逮捕事例
「バレないだろう」という安易な考えを払拭するために、実際に日本国内でオンラインカジノのプレイヤーが検挙・逮捕された事例を知っておく必要があります。
2016年に発生した摘発事例(通称:YouTuber事件)
2016年、特定のオンラインカジノを利用していた日本人プレイヤー数名が、京都府警によって賭博容疑で逮捕・書類送検されました。この事件のポイントは以下の通りです。
自宅からのアクセスでも逮捕される: プレイヤーは自宅のパソコンからアクセスしていましたが、「賭博場を開帳した者」(胴元)と「客」(プレイヤー)が揃っていると判断されました。
特定の日本人向けサービスが標的に: 摘発対象となったのは、特に日本人利用者に対して積極的にプロモーションしていたサービスでした。
金銭のやり取りが決定打に: 銀行振込や電子決済による入出金の履歴が、賭博行為の証拠として使われました。
この事件では、逮捕されたうちの数名が略式起訴を受け入れ罰金を納めましたが、そのうちの1名は弁護士と協力し、違法性を争って不起訴を勝ち取りました。 しかし、これはあくまで特別なケースであり、基本的には「立件されるリスクがある」ことを示す重大な前例となりました。
3. なぜオンライン上の行為が摘発されるのか?
多くの利用者は「海外のサイトだし、匿名で遊べるのでは?」と考えがちですが、警察による摘発が可能な理由は主に以下の3点にあります。
① 金融取引の追跡
オンラインカジノで遊ぶためには、必ず金銭の入金と勝利金の出金が必要です。これらの決済には、クレジットカード、銀行振込、電子マネーなどが利用されます。
警察は、これらの**金融取引の履歴(いつ、誰が、どこに、いくら送金したか)**を辿ることで、利用者を特定することができます。特に高額な取引を繰り返している利用者は、捜査の対象になりやすいと言えます。
② IPアドレスの特定
インターネットに接続する際には、必ずIPアドレス(インターネット上の住所)が割り当てられます。捜査当局は、海外のサービスプロバイダや決済代行業者に協力を求め、**日本国内からのアクセス履歴(IPアドレス)**を特定することが可能です。
③ 日本語でのプロモーションとカスタマーサポート
摘発の対象となりやすいカジノは、海外でライセンスを持っていても、ウェブサイトが完全に日本語化され、日本人スタッフによるサポートや日本人向けに特化したプロモーションを行っているケースです。これは、運営側が明確に日本の居住者をターゲットにしている証拠と見なされます。
4. まとめ:絶対的な安全はないと認識すべき
「オンラインカジノは儲かる」「グレーゾーンだから大丈夫」といった情報に惑わされるのは非常に危険です。
現在の日本の法解釈と実際の摘発事例を考慮すると、日本国内からオンラインカジノに参加し、金銭を賭ける行為は「違法賭博」として処罰の対象となるリスクがあります。
オンラインカジノを検討する方へ
違法性の認識: 自宅であっても、海外サイトであっても、賭博罪が適用されるリスクは常に存在します。
安易な入金は避ける: 決済履歴は必ず残ります。この履歴が摘発の決定的な証拠となります。
手軽に楽しめる娯楽は他にもたくさんあります。「違法行為に加担しない」という意識を持ち、法律とリスクを正しく理解した上で、健全なインターネット利用を心がけましょう。